【港区女子名鑑】年収1億の不動産王とAV女優と一夜を共にした話

目次

 
金曜の六本木。22時。
私は、ホロ酔い気分で交差点のガードレールにもたれていた。
 
隣で髪をかき上げる美女は、数年来の友人で、ここ六本木のラウンジ嬢だ。
 
オンナ同士、いつものバーでひとしきり騒いだ後、2軒目に行こうか、帰宅しようか迷っていた。
金曜ということもあり、このまま解散するのは少し物足りない気持ちもある。
 
「この後どうするー?」
「任せるよ!」
 
その時、私たちの会話をかき消すように太い声が響いた。
 
「あれ?帰っちゃう感じ?飲みいかない?(^_-)-☆」
 
ハッと顔をあげると、目の前に黒光りするおじさんが仁王立ちしていた。
両脇は前髪テカテカのゴリラ系リーマンが固めている。
 
足元はジョンロブのエナメル
光沢のあるスーツはおそらくキートンだ。
 
そして腕には……えっ、パテック?本物ですかそれ???
 
出た。
六本木名物「なんか知らんが金だけあるおじさん」だ。
 
彼のファッションの全身総額をザッと暗算している間に、おじさんは印籠のようにLINEのQRコードをかざし始めた。
 
「ね、ね、LINE教えてよ〜♡」
 
水戸黄門さながらのかざしっぷりに、私たちは一瞬息を呑んだ。
なんかもう、小脇のゴリラが助さん格さんに見えてくる。
 
さて。
こういう場合、女同士はまず、相棒の食いつき具合を確認しあう。
横目でチラッと、友人のテンションを確認すると……
 
瞳孔をカッ開いて時計を凝視していた。
パテックフィリップ一発GO!!

黄門御一行との2軒目が決定したところで、簡単に私たちのスペックを紹介しよう。
まずは私。
某出版社で美容系雑誌を担当する25歳の独身女子。
恋愛での得意領域は大手町周辺のキャリア系男子だが絶賛婚活中で見た目がややおとなしめなので、港区ウケは正直悪い
 
そして先ほど時計に釣られた友人も、同じく25歳独身。
芸能界を目指していたものの夢半ばでAV女優の道に流れ、前述のように現在はラウンジ勤務だ。
綺麗に巻いた茶髪ロングに、がっつりメイクで全体的に派手目だ。
 
この通称AVちゃん。
なんというか“六本木的な匂い”がプンプンするので、オラオラ系にクソほどモテる
おそらく、今夜は彼女の独壇場だろう。
※AV業界の裏側については『【業界裏話】AV撮影スタッフに直撃!あの“名シーン”の舞台裏は?』を読んでね♡
 
「えーどこ連れてってくれるんですかー?♡」
 
「ま、楽しみにしてて!」
黄門がほほ笑むと、便器色のセラミックがまぶしく光った。
 
歯、白ぉぉぉっっっwwwwww
 
吹いちゃダメだ。吹いちゃダメだ。
AVちゃんがワナワナと肩を震わせると、自慢のGカップも一緒にぶるぶる揺れていた。

一行は、意気揚々と2台のタクシーを停めた。
AVちゃんは黄門さまの華麗なエスコートを受け、1台目へ乗り込む。
一方、私はと言うとゴリラ達と共に後続車に詰め込まれた。
 
助手席のゴリラ①が手慣れた感じで、運転手に道案内する。
彼、同い年くらいだろうか。子犬っぽい笑顔が爽やかな、小池徹平似。
彼を助さんと呼ぼう。
 
後部座席には私と、ゴリラ②
ややぶっきらぼうで五郎丸似のラガーマン風。さしづめ、こちらが格さんか。
 
ふと、バックミラー越しに運転手と目が合った。
「(この3人は一体……!)」
 
運転手の心の声が痛いほど伝わった。
家畜を連れて、一体どこに向かっているのか。
なんだか私まで、嫌な予感に襲われてきた……。
タクシーは西麻布方面へ進む。
 
私の脳内にはドナドナのテーマが流れていた。

それから10分ほど走っただろうか。
「はい着きました~」
 
私の嫌な予感は、見事に的中した
 
タクシーは古びた団地風のマンションに停車したのだ。
 
「店じゃないやんけ」
 
先についた黄門と、AVちゃんが待っていたのだが、彼女の青ざめた顔を見て、改めて状況を悟った。
 
「まずい……団地妻にされる……( ゚Д゚)」
 
なんせ友人は元AV女優。
なんというかその、多少の場慣れ的なアレがあるはずだが、私はド素人の一般人だ。
港区おじさんに売り飛ばされるなんて、マジでごめんだ。
 
ふと、親の顔が浮かんだ。
そういや、悪い友達とは遊んじゃダメって言われてたっけ。
しかし、もう逃げるタイミングは完全に失った。

彼らに言われるがまま、エレベーターに乗り込むと、ヤバい予感はMAXに達した。
(BGM:ドナドナ)
 
てかこの黄門、よくよく見るとカタギじゃない雰囲気だ。
パテックの魅力を相殺するように、腕にはクッッソ下品な数珠が重ね付けされている。
 
なんでオラオラ系ってみんなこれするんだろうか。
怒りの矛先がわけわかんないとこに向き始めたとき、エレベーターは、10階についた。
オワタ。この階じゃ飛び降りるのも無理だ。
 
「ピンポーン」
 
ゴリラが玄関のチャイムを鳴らすと、中からメルヘンなエプロンをしたおっさんが出てきた。
私「(ん?あっそういう設定?)」
エプロン「は~~い!待ってたよ~ん♡」
 
オネエだった。
彼に連れられ、おそるおそる玄関をあがると……

うす暗い室内には、間接照明の灯りがゆらゆらと揺れていた。
大きな窓いっぱいに、煌びやかな東京の夜景が広がる。
 
うわぁ……」
リビングを見渡すと、テーブル席が数席。
上品な男女がワインを飲んでいた。
黄門「看板もないし、ネットにも出てないんだよ、ここ」
 
奥の厨房では、さっきのオネエがこれみよがしに、フライパンを振っていた。
どうやらここはマンションの一室を使った会員制レストランで、あのオネエの電話番号を知る人だけが、予約をとれるシステムらしい。
 
私は歓喜した。別に店にじゃない。
料理とかも、ぶっちゃけどうでもいい。
団地妻にならずに済んだだけで、今日はアガリだ。
 
「なんか適当にお願い!」
このパワーワードを皮切りに、高そうなワインが卓に並ぶ。
店員がワインのうんちくを垂れてる間に、黄門はおもむろにプロテイン的なものを飲み始めた。
 
黄門「最近身体、鍛え始めてさぁ(ドヤ)」
ゴリラ「社長、煙草も辞めましたもんね」
 
出たーーーーーーwwww
金持ちって、ある程度のクラスまで上り詰めると、突然「お金で買えないもの」に価値を見出し始める。
手始めに、健康志向へシフトチェンジするのはわかりやすい例だ。
私は性悪丸出しの笑みを浮かべながら、グラスをこねくり回した。
 
黄門さまの職業は!?年収は!?
▶▶▶

やたら羽振りの良いこの黄門は、どうやら不動産業を営んでいるようだった。
取り巻きのゴリラ達は不動産投資ファンドの社員らしい。
会話の内容や会社の規模から推定するに、資産は自社株で3~4億、取引先の株で5000万ほど、他投資分で数千万と見た。
 
今年は、1本いかないな〜(笑)」なんてヘラヘラこぼしているので年収は8000万くらいか、あるいはそれ以上かもしれない。
 
「やはり不動産、強い……!!!!」
 
1億円プレイヤーは国内に約2万人。
日本の総人口が1億人としても、巡り会える確率は約5000分の1。
なかなかレアな出会いが六本木交差点に転がっていたものだ。
 
私たちのテンションはMAXに達した。
 
 
……が、同時にどこかがっかりした自分もいた。
 
資産ウン十億あるような、マジでガチでリアルにヤバいクラスの金持ちは、もう酒席で年収の話はしない。
資産の話もあまりしない。
服も全身ユニ●ロで、なんなら時計すらしていない。してもアップ●ウォッチで十分だ。
 
物欲や自己顕示欲から解き放たれた菩薩のような顔つきで、食事とか旅行とか、
なんていうか人生を彩るものにだけ課金し、他は極めてシンプルに暮らしている
もう別に誰にもマウントをとる必要がないからだろう。
 
つまり、おもくそ成金な見た目で、
「1本いかなかったマウンティング」をした黄門は「玄人レベルの金持ちには未だ及ばない」ことを示してしまったのだ。

そんな私のゲスな妄想をよそに、場は盛り上がりを見せていた。
黄門「今なんか欲しいものないのー?」
 
女子が壮絶にピリつく質問がブチ込まれた。
ここで「リアルおねだり」にチャレンジするか、笑いに徹して今後につなげるか。
 
「リアルおねだり」に舵を切る場合、相手の収入相応の品を瞬時にジャッジする必要がある。
黄門の役員報酬から算定するに、毎月使える額は……
得意の暗算をしかけたが、とりあえずAVちゃんの出方を伺った。
 
AV「んーヴァンクリのピアスですかねー♡」
 
いっっった!!!!
本気のおねだりいきよった!

解説しよう。ヴァンクリーフ&エーペル。
フランス生まれの高級ジュエリーブランドで、ピアスは1つ20万くらいから、高いものでも100万円。
まぁハリーウィンストンには及ばないものの、夜職女子から、セレブ主婦まで幅広い層に支持されている。

彼の年収から判断するに、リアルにサクッと買ってくれそうな絶妙なライン。
黄門もまんざらでもなさそうな様子だ。
 
※上手なおねだりの方法は『パパ活にも応用OK♡欲しいものを確実に買ってもらうおねだりテク』を参考にしてね♡
 
ゴリラ「えーじゃあ好きなタイプは?」  
そう、今日のAVちゃんのお目当ては確実にこの不動産王だ。
私は話題を、この助格どもに寄せながら、アテンドに徹すれば良い。  
 
とりあえずお酒も進み、こちらの土俵は温まった。
さぁ、ダブルスから個人戦に突入だ。
 
ちらりと横目でAVちゃんを見るとすでに、黄門さまのお膝にチョコンとお座りしていた。
仕事はえーな、おい!!! 
私の渾身のアテンドなど、一切見てもいなかった。
 
「どんどん飲もうよ!」こうなると黄門さまはもう上機嫌だ。
AVちゃんの二の腕をムニムニしながら、ワイングラスを流しこんでいた。
あーあ、これだからおっさんは。
 
エプロンオネエが なんかジュージューやかましい肉を運んでくる。
この時間に肉。
ゴリラの仕業だな?
 
オネエは「誰が最近顔を見せない」とか、「誰がひんぱんに来る」とか、どうでもいい世間話を始めた。
 
しかしこの世間話で黄門は、羽振りの良い顧客や、消えていく同業者の情報をキャッチアップしているんだろう。
 
エプロン「でもさぁ、娘さんと同年代の子達と飲めていい身分よねぇ」
 
私たちは一瞬、目を見合わせた。
 
オラオラ経営者の、「家庭」や「夫婦愛」みたいな人間くさいものが垣間見えた瞬間って、どうもくすぐったい。  
できれば「酒!」「金!」「オンナ!」みたいな豪快なイメージのままでいてほしいものだ。
 
私は、聞こえなかったふりをして、そっとグラスを置いた。
 
AV「私こそ、こんなとこ連れてきてもらえて嬉しいですぅ♡」
酔いが回っていたんだろう。黄門がぼやく。
 
「俺はさ、綺麗な子たちに足元みられたくないわけ」
 
リップサービスなのか、ちょっとした本音なのか。
照明が暗く、表情からは判断できなかった。
 
なるほど。
このクラスの金持ちになると、
「リッチで有名な店」に連れていくことに何の価値もない。
 
遊び慣れた女の子なら、高級店のランクなんてすぐにわかるし、行きつけだった、なんてこともある。
 
店の単価で自分の経済力をジャッジされかねないから「価値が誰にも図れない謎の店」に連れていくのだ。
きっとこれまでもセレブ女子()たちの鋭い審美眼にさらされてきたのだろう。
 
この店をチョイスした黄門さまの悲哀がにじみ、なんだか泣けてきた。
そして、つい先ほど、全身の値段を必死に暗算していた自分をブン殴りたかった。
 
しんみりした空気を黄門が立て直す。
「どんどん飲もうよ!!」
グラスにワインがなみなみと注がれる。
飲むゴリラ。暗算クソ女が負けじと続く。       

ハッと気が付き、時計を見ると、もう深夜2時だった。
ワインの空ボトルが卓に並んでいる。いやーさすがに酔っぱらった。
ゴリラ達は、サバ折りの状態で寝ていた。
 
「あれ?黄門さま?」
(呼んじゃったよ)
 
黄門は、AVちゃんの爆乳に顔面もろとも埋める形で臨終していた。
不動産王のバブちゃんスタイルはまじで目に悪い。
 
たたき起こされた黄門は自慢のパテックをチラ見すると、AVちゃんに優しくささやいた。
「そろそろ、出ようか?」
 
さすがビジネスマン。
私がゴリラと戯れている間に、オトナの商談は成立していたようだ。
 
マスカラの落ちた目をこすりながら、私は酒やけした声を絞り出した。
「あ、帰ります……?」
 
黄門は、酒臭い私に微笑みながら、3万円を握らせた。
 
「タクシー代ね」
 
控えーー!!控えよぉー!!
頭が高ぁぁああい!!!
 
全力で叫びたかったが、なんせ声が出ない。
黄門は、フラフラしながら正確に会計を済ませた。
さすが社長、金周りはしっかりしてまんなあ。
オネエは領収書を切りながら、そっと目配せする。
 
 
黄門とAVちゃんは、肩を寄せ合うようにしながら何かをささやきあって店を出て行く。
 
「人生楽ありゃ苦もあるさ。」
 
彼の大きな背中が、そう語っている気がした。
 
いや知らんけどな。
 
黄門とAVちゃんが消えると、ゴリラたちも起きてきた。
「疲れたでしょ?」「あの人、飲ませすぎだよなー!」
 
あぁ、本当は心優しい人達だったんだ。
家畜扱いしてごめん。

と思ったその瞬間、ゴリラの片割れ(爽やかなほう)が、ポケットから指輪を出し、サッと薬指にはめたのを私は見逃さなかった。‬


まさかの‪助さん、黒幕パターン!!‬!


‪サスペンス的には、まあ上出来の結末だ。‬

そうして助さんは一人さっさとタクシーに乗り込み、‪嫁の待つ家へ帰って行った。
さて、私もそろそろ帰ろう。

私が後続のタクシーに乗り込むと、ラガーマン風のゴリラ、格さんが同乗してきた。‬


‪早朝から仕事のため、会社近くのビジネスホテルに泊まるらしい。‬

 
そっか、彼は華金じゃなかったんだ。‪
 
酔いが冷め切らない私たちは、後部座席でうなだれていた。‬
 
肩と肩が触れそうで触れない、微妙な距離だ。‬
 
そういえば彼とはあまり話せなかった。
というか、彼は黙々と酒を飲んでいた。
 
横顔をまじまじ見ていると、照れた感じで笑いかけてきた。  ‬

‪「ホテル、一緒に行く?」‬


‪ゴリラの瞳に、真意を探す。‬


‪が、これは本気じゃない。‬‪
最後のワンチャン運試しくらいだ。‬


‪あーあ。
もう少し熱意を持って丁寧に口説いてくれたら、案外コロっといったかもしれないのに。‬

‪「何言ってんですか!」‬
‪ひとあし先に降りる事を、私もイタズラっぽく告げた。‬


‪「また、飲もうよ」‬

‪彼の瞳が、これは本気だと教えてくれた。
 
まあ、悪くない。 ‬
 
タクシーの中で、しわくちゃの3万円を握りしめながら窓の外を見ていた。‬


‪西麻布から自宅までは2メーター。
たったの1500円で帰れる。‬


‪差額の28000円ちょっと。
 
これは一体、私の「何」に支払われたのだろう。‬


‪ぼんやり考えていると、携帯が鳴った。‬AVちゃんだ。‬


‪「おつかれ!」‬


‪彼女はどれだけ酔っ払っても必ずこのLINEをくれる。‬

‪これから黄門様とどんな夜を過ごすのか。
容易に想像がついた。
 
次、彼女に会う時は、耳にヴァンクリが光っていますように。‬


‪いや、光ってなきゃ困る。‬

 
タクシーは夜の西麻布を進む。
 
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