「しっぽり」という言葉の意味と使い方

たまに耳にすることがあるしっぽり”という言葉。

なんとなくニュアンスで理解している人は、厳密な意味を説明するのは難しいはず。

今回は、”しっぽり”という言葉が持つ3種類の意味について例文を挙げながら説明します。

”しっぽり”という言葉について理解が深まれば、日本語が持つポテンシャルがわかるようになります。

「こんな奥深い言葉があるんだ」とさらに探求してもらいたい願いも込めて、”しっぽり”について掘り下げます。

 

「しっぽり」という言葉の意味と例文

日本語には、伝わりやすくて意味が明瞭な言葉と、心のひだを表現するような細やかで微妙なニュアンスを含むものがあります。

”しっぽり”は明らかに後者の言葉でしょう。

 

言葉を突き詰めると、よりマニアックな方向へと進んでいきます。

”しっぽり”というワードはどちらかといえば、難易度が高め。

だからこそ正確な意味を知り、使いこなすことができれば「ワンランク上の教養人」と印象付けることも可能でしょう。

何気なく口にする言葉は、その人間の持つバックボーンや素養を如実に語ります。

言葉の語源を知ることで、”しっぽり”への理解を深めることができます。

 

”しっぽり”の語源はいくつかあります。

  • ”しっとり”から転じたのではないかという説。
  • ”しみじみ”が変容したのではないかという説。

 

どちらが正しいというものではないですが、”しっぽり”がこの二つの言葉と近い意味を持つことは事実でしょう。

”しっぽり”という言葉が持つ意味をおおまかに分けると

  • 濡れるさま
  • 男女間のさま
  • 静かなさま

などの3つとなります。

各々の意味と使い方や例文について解説していきましょう。

 

濡れるさまを表現する意味

”しっぽり”は湿気を含んだ言葉です。

”しっぽり”という言葉は品位のある言葉なので、度合いでいうと”ほんの少し”や”静か”というようなニュアンスを持っています。

スコールのような雨とは全く違います。

雨が降っていない状態と豪雨は両極端な状態であることから、”しっぽり”はその間を示す言葉と言えます。

 

日本人は曖昧さを好みます。

「すみません」という言葉が、謝罪以外の意味合いを持っているのは周知の通りでしょう。

0か100ではなく、間のグレーゾーンを巧みに表現するのに長けているのが我々日本人なのです。

”しっぽり”を捉えるには、ゆっくりと小さいものであることを忘れてはいけません。

決して激しいものではないのです。

 

日本固有の生き物に置き換えると分かりやすいでしょう。

例えばニホンザリガニやニホンイシガメなどは、やや脆弱ではあるものの繊細な生き物です。

これに対して、アメリカザリガニやアカミミガメ(キバラガメ、ミシシッピアカミミガメ、フロリダガメの総称)などは、たくましさはあるものの細やかさを持っていません。

他の国に侵入して容赦なく陣地を奪い生態系を変化させていく様子は、力強さと遠慮の無さと品のなさを感じます。

外来種の話でいえば、アメリカから渡って来て日本の池や川に住み着いたブラックバスやブルーギルも、アメリカザリガニやアカミミガメと同じくアグレッシブで前へ前へと出ていくタイプの生き物。

こういった生き物たちは、”しっぽり”と縁遠いと考えれば意味を理解しやすくなります。

日本の在来種であるフナやアユやヨシなどは、”しっぽり”に近いニュアンスを持った魚と言えます。

”しっぽり”には派手さがないものの、そこはかとない人情の機微が含まれています。

 

使い方

”しっぽり”は湿り気のある言葉ですので、降雨の描写でよく使われます。

雨が降っている様子を表すだけでなく、雨に濡れた人も”しっぽり”という言葉を用いて言い表すことができます。

 

例文

  • いきなり雨が降ってきて、しっぽりと濡れてしまった
  • 少し前から降り出した雨が、街並みをしっぽりと濡らしている

などが例文となります。

小説の一節に出てきても違和感のない情緒的な文章ですね。

男女間のさまを表現する意味

”しっぽり”という言葉は艶っぽい意味を持ちます。

男女の逢瀬で”しっぽり”が使われることも少なくありません。

急激に距離が縮まるというよりも、段々とゆっくり近づいていくようなニュアンス。

お互いが相手のことを思いやるからこそ、そのようになるのでしょう。

 

エゴイスト同士の恋愛では、”しっぽり”という言葉が必要ありません。

心のひだとひだを繊細に刺激し合うような大人の恋にこそ、”しっぽり”という言葉が似合います。

”しっぽり”は男女の愛情が細やかな様子や男女間の距離がゆっくり縮まっていく様子などを表しています。

 

使い方

男女の関係で、ロマンティックなシチュエーションで使うと映える言葉です。

たまにジェットコースターのごとく激しい恋愛を繰り返す人がいますが、こういった人達の状況は、”しっぽり”とはかなり遠いと言わざるをえません。

 

都都逸の一節で「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」というものがあります。

このように奥ゆかしい人の恋愛にちなんだ用法でこそ、”しっぽり”という言葉がフィットします。

日本には古くから多くの物語が残っていますよね。

その中の多くは、ゆっくり互いの心を通い合わせて逢瀬を楽しむという内容になっています

日本人の恋愛模様は、昔から”しっぽり”としたものが多かったのでしょう。

 

例文

  • 人気の少ないバーで二人の男女が何もしゃべらずに、ただしっぽりとアルコールを飲んでいた
  • しっぽりとカクテルを口にしながら、二人は距離を縮めていき店の外へと消えた

などが例文となります。

 

静かなさまを表現する意味

”しっぽり”は静寂という意味合いを持っています。

喧騒から離れてゆったりとした時間を過ごす際に使う言葉です。

スローライフという言葉がブームになった時期がありました。

自らを省みる時間が設けるには、必然的に”しっぽり”とした環境で過ごさなければいけません。

”しっぽり”という言葉は、マイナスイオンが溢れるような落ち着きと癒しを含んだ穏やかさを持っています。

 

使い方

人生で得も言われぬ静寂に出会うことがあるはずです。

その時に「言語化したいけど、ピッタリとくる言葉が見つからない」と感じる人もきっといることでしょう。

そんな時にこそ”しっぽり”という表現を使ってください。

使用した後に「こういう言葉の使い方をすればいいんだ」と理解できることでしょう。

 

例文

  • 忘れられない女性のことを、暮れかけた公園のベンチに座りしっぽりと考えた
  • もう会えない人達のことを思い出し、夜のベランダでしっぽりと手を合わせた

などが例文となります。

 

「しっぽり」の類語

”しっぽり”の類語は複数あります。

まずは、”しっとり”から解説しましょう。

”しっぽり”と音の響きがよく似ている”しっとり”ですが、湿り気を含んでいる状態を指します。

例文

  • 風呂から出たばかりで髪がまだしっとりと濡れたままだ
  • いきなりの雨でしっとり濡れてしまった

 

次は”ゆっくり”です。

落ち着きがあって静かな様子を表しています。

例文

  • レイトショーでゆっくりと映画を鑑賞する
  • 家族が実家に帰っているので、一人でゆっくり晩酌を楽しむ
  • 日曜の朝は何もせずにゆっくりと布団の中でまどろむ

 

3つ目は”ぼそぼそ”。

”ぼそぼそ”と聞けば、小声で話しているようなイメージを持つかもしれません。

しかし、ぼそぼそ”は「男女が情愛細やかに過ごす様子」という意味を持ちます。

例文

  • 男と女がぼそぼそ語る
  • 男と女がぼそぼそ食事をする

類語が何であるかを理解すれば、より”しっぽり”の持つ意味を正確に掴めるようになるでしょう。

 

4つ目は”しとしと”。

静寂の中で降る雨であったり、湿っていたり、静かにゆっくりと物事を行う様子が”しとしと”という意味ため、”しっぽり”と非常によく似た意味を持っています。

”しょぼしょぼ”にも似た意味があります。

小雨が降り続いていたり、そぼ降るような様子や、あるいは”しょんぼり”としょぼけた様子、また無気力な様子、目がはっきりと開けることができないまま瞬きをする様子などが”しょぼしょぼ”の意味となります。

湿気を含有している他の言葉では”じとじと”も忘れてはいけません。

湿気を含んでいるという意味に不快さが加わると”じとじと”になります。

そぼ振る雨に絞ると、”そぼそぼ”や”しょぼしょぼ”も同じような意味となります。

”しっぽり”自体もそうなのですが、いずれも擬音語、擬声語、擬態語といわれるオノマトペに称される言葉だというのがわかりますね。

 

「しっぽり」の対義語

反対の意味を持つ言葉が何かを知ることで、より明確に”しっぽり”の意味を把握できます。

”しっぽり”の対義語には「騒然と」「すぐに」などがあります。

ガヤガヤして騒がしがったり、瞬発的な感じやスピード感のある言葉は”しっぽり”と正反対の意味を持ちます。

ここまでの説明で分かる通り、”しっぽり”は情緒や抒情を含んだ言葉です。

反対に「騒然と」「すぐに」などは、感情の機微を覚えづらいワードでしょう。

 

「しっぽり」という言葉を使う時の注意点

”しっぽり”という言葉を使う際の注意点ですが、どちらかといえばボキャブラリーが豊富な人にしか意味を汲み取ってもらえない言葉であると理解しておく必要があります。

例えば語彙が少ない人に「今日はしっぽりと飲みませんか?」と伝えても、「飲みに行くのはOKですが、しっぽりって何ですか?」と尋ねられるでしょう。

 

また男女の情愛を意味するニュアンスの用法にも注意が必要です。

LINEやメールで恋愛関係になれたらいいなと思っている相手に対して「明日は二人でしっぽり過ごさない?」と連絡を入れたとしましょう。

”しっぽり”という言葉を知らない人からしたら、どんな意図のあるメッセージなのかが掴めません。

素直な人であれば「しっぽりって何ですか?」と聞けるでしょう。

しかし世の中にはプライドの高い人たちがたくさん存在します。

知らないのに知ったかぶりをすることもあるでしょう。

あなたが”しっぽり”というワードを選択したが故に、相手に負担を感じさせてしまうケースもあるのです。

相手と親しくなりたいのなら、その人の持つボキャブラリーレベルを知るべきです。

この人なら”しっぽり”という言葉が理解できる、と判断した時点で使うようにしましょう。

分からない言葉を連発することで「合わせる気がない人」「賢く見られたい人」などのネガティブなレッテルを貼られる危険性があります。

 

性的な話で恐縮ですが、男性器を女性器に挿入する前に濡れていなければ女性側が痛みを覚えます。

男性は前戯で”しっぽり”と濡らさなければなりません。

女性が濡れ濡れになってきたからといって、「しっぽり確認OKです!」と妙な言葉を女性に伝えるのはやめましょう。

せっかくいいムードになってきたのに、意味不明なことを言われた女性は興覚めするでしょう。

脳内で「しっぽりしているんでインサートしても大丈夫だな…」「しっぽりしてるのは感じてる証拠」などと思うのは自由です。

しかし言語化するのはNG。

 

官能小説家の霧原一輝氏が『しっぽり濡れ肌』という作品を出していることからも分かるように、”しっぽり”は匂い立つエロスを含んだ言葉なのは確かでしょう。

だからといって言語化してしまうと、「はぁ!?」とか「何それ?」といった冷たい反応が返ってきます。

あるいは反応が薄いか、無視される可能性も高いでしょう。

諸説ありますが、官能的な”しっぽり”は、話し言葉よりも書き言葉の方がフィットするのは間違いありません。

そこを履き違えないようにしましょう。

 

また珍しい言葉を覚えると使いたくなるのが人間の心理。

しかし無理にねじ込むような使い方をしても言葉が浮いてしまうだけです。

”しっぽり”を使える状況で自然に使えるのが理想といえます。

 

まとめ

「しっぽり」とは

  • 濡れるさま
  • 男女間のさま
  • 静かなさま

という3種類の意味があると分かっていただけたはず。

各々状況に応じた使い方をしてくださいね。

 

”しっぽり”のように機微を表す日本語というのはたくさん存在します。

今回、興味を持った人は是非他の情緒的、抒情的な言葉についても調べてみましょう。

ボキャブラリーが豊富な人は尊敬を集めやすいですし、感情をコントロールしやすいとも言われています。

さらに言葉への興味を深めてもらい、語彙を増やしていただけると幸いです。

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