人は、自分にはないものを持つ人に惹かれるものらしい。
私は昔から負けず嫌いで、好きなものは試験結果の順位の貼り出し、表彰状、分かりやすいステータス。
そう、他人から見て「すごい」ことが分かりやすい状態に固執する、いやしい人間だと自負している。
だからこそ、持って生まれた能力は大したことはないが、努力と意地汚さの功績として、他人から「優秀な人」として扱われることもあったりなかったりする。
もともとはただのポンコツなのに、我ながらよく頑張っていると思う。
私は、自分が欲しくてたまらない学歴や名誉のために努力する人間なのだ。
だからだろうか、私は無欲な人に惹かれてしまうことがある。
ただ家から近いからという理由で学校を選び、ただなんとなく趣味程度に仕上げた作品で賞を取り、表彰金で欲しいものがないから途上国に寄付する。
そんな男性に、私は過去何度か自らアプローチをしかけ、
100%の確率でフラれている。
彼らは、驚くほど私に興味を示さない。
一度、合コンの幹事であった男友達に、
なぜ私がフラれたのか、本人に聞いてきてほしいと頼んだ。
理由は二つあった。
・胸がある(貧乳でない)女性は全員、お母さんに見えるので苦手
・化粧をしている女性は、ニューハーフに見えるので苦手
注)「胸のある女性がお母さんに見える」の「お母さん」は、意味合い的には「おかあちゃん」のような意味であり、彼の母親が巨乳だったということではない。子だくさんの肝っ玉かあちゃん、のようなものをイメージするとだいたい爆乳である…というようなことからきているらしい。
正直、私は自分で自分の胸が大きいと思ったことは一度もないし、
自分で自分の化粧がすごく濃いと思ったこともなかった。
しかし、その彼が数か月後に付き合い始めた女性を見て、納得した。
彼は、学園のマドンナとして名を馳せるレベルの美女である私を差し置いて、
まな板のような胸を持ち、生まれて一度も眉の手入れをしたことがなさそうな女性を選んだのだ。
1.その男が、ただの悪趣味
上記の事件に関し、関係者全員がこのように考察した。
「あいつ、女の趣味悪すぎるやろ」
と。
客観的に見て、だれがどう見ても、彼が選んだ女性よりもE子ちゃんのほうが普通に可愛い。いかなる理由があろうと、E子ちゃんをフッてあの女を選ぶ意味は分からない、と。
皆、口々にそう言ったのである。
しかし、当事者である私はずっと考えてしまう。
私になくて彼女にあるものって何なのだろう?
いったいどれほど魅力的な女性なのだろう?
と。
失恋をすると人は理由を考えてしまう。
また、対抗馬がいて、そちらに負けたとなると、自分のどこが劣っていたのかと考えてしまう。
私は幸か不幸か、自分が敗れた恋敵の姿を見ることができたし、状況を把握することができた。
しかし、世の中には理由を知らされずにする失恋もある。
わけもわからずフラれたときに、こう思うと少し楽になるのではないだろうか。
「あいつは女の趣味がひどく悪いのだろう」
と。
そう、世の中には、ノーメイク・ノーバストの女性しか、異性として認識できない特異な男もいるのだから。
2.男を見返す方法
私のもとには、日々、失恋乙女からの相談DMが来るものだが、
「自分をフッた男を見返したい」
と考える乙女が多いことがよくわかる。
私もそう思ったことがある。
絶対あいつより格上の男と結婚してやる。
あいつには手の届かないレベルにいきたい。
と。
しかし、断言しよう。
この考えそのものがフッた本人への執着そのもの。
この思考の先に幸せな恋愛は起こりえない。
3.元カレ以上の男と付き合うことで元カレを見返す?
若かりし頃、私はある失恋をバネにして成長を試みた。
そこには大志があった。
必ず元カレを驚かせるレヴェルの男と結婚してやる、という、大志が…。
私は付き合う人に分かりやすいステータスを求めるようになった。
私の恋愛にまつわる噂が元カレの耳に入った時に、一言聞いただけで「負けた」と思わせるインパクトが欲しかったからだ。
そして分かりやすく高学歴高収入高身長、ステータス職業の彼氏を見つけた。
彼と付き合っている間、私は幸せだったと思う。
元カレよりも優れた学歴の彼氏により提供される知的な会話、
元カレよりも高い収入の彼氏と食べる回らない寿司、
元カレよりも高い身長の彼氏を見上げるたびに首にかかる負担、
そのすべてが私を満足させた。
しかしほどなくして、この彼氏には浮気をされて別れることになった。
※実際にはお互いに浮気して別れることになったし、どちらかと言うと原因は私の浮気という線が濃厚なのだが、同時に彼の浮気も発覚したので、私は本件について、自分をかわいそうに見せたい場合には「浮気されて別れた」と他人に話すようにしている。事実とは、切りとる側面により、いろいろな見え方をするものである。
高学歴高収入高身長ステータス職業彼氏を失った私は、
もちまえの向上心で、さらなる高みを目指した。
何度か失恋を繰り返すたびに私の異性に対する基準は上がり続け、
いつしか私の付き合える男性の条件は以下のようなものになっていた。
・学歴:東大、京大、それと同程度の水準以上。
(医学部なら慶應は可、ロースクールなら中央大学可、など)
・収入:30歳時点年収1500万円以上。
(ステータスと将来性次第で調整可)
・身長:185cm以上。ただし、短足不可。
無論、このような条件で相手を探し、理想の相手にめぐりあったとしても幸せになれるとは思えない。
4.元カレを見返すために、競うべきは〇〇ステータス
失恋をバネに成長すること自体は、悪くない。
「元カレを見返したい」と思うことも、悪くない。
しかし、他人の目を気にして「彼氏ステータス」を上げようとするのは愚かなことである。
それならせめて、自身のステータスを磨いて手の届かないレベルを目指すべきであろう。
付き合う男の価値で、自分の価値が決まると思っているような女は、本当に低レベルだ。
誰も、そんな女を失ったことを後悔などしてくれない。
本当に元カレを見返したいと思うのであれば、
競うべきは「彼氏ステータス」ではなく、自身の「幸福ステータス」である。
たとえ彼氏がいなかろうが、低スペックな男と結婚しようが、
あなたが昔よりも幸福そうに生きていたら、元カレはこう思うはずだ。
「俺がいなくても、幸せなのか…」と。
そう思ってもらうためには、まず、元カレのことは忘れなければならないだろう。
あなたのことなんて思い出さないくらい、今が幸福です!
という顔をして生きることが大切である。
いつしかあなたは、「あの男を見返してやりたい」と思っていたことさえ、完全に忘れて楽しく笑っているはずだ。
5.失恋を楽しむ
先述のとおり、失恋の感情処理は、
・相手の男が悪趣味、見る目ナシなのだと理解する
・幸せになることでしか見返せないと理解し、幸せになる
この2点が重要である。
しかしこれに加えて、
・失恋を楽しむ
ということも、視野に入れていただきたい。
大人になればなるほど、リスクを避け、争いを避け、日々が平穏で退屈になっていく。
多くの大人は、「可能性がなさそうな異性にはチャレンジしない」「フラれる前にひっそりと離れる」というような自己防衛策をとってしまう。
そして、子供の頃のような純粋な
「悔しい」
「悲しい」
という感情をも忘れてしまう。
しかし、「悔しい」「悲しい」がなければ、「うれしい」「楽しい」さえも感じにくくなる。
幸、不幸は直前の状態との「差」が大きいほど大きく感じられる。
マイナスの感情があるから、プラスの感情も感じられるのだ。
「悔しい」「悲しい」から逃げる大人は、「うれしい」「楽しい」も満足に得ることができない。
だから、何歳になっても失恋を恐れないでほしい。
何度でも大失恋をして、そのたびに泣きはらし、そして次の幸せを目指していけばいいのではないだろうか。