恋人から遠く離れてー社会的距離の時代の恋愛映画についてー

職場で恋愛リア充全開の女の子に1人で観に行った映画の話をしていたら

1人で映画見る人ってそんなにいるんですか?私、人生で1人で映画館に行ったこと一度もないですよ」

という強烈な一撃をお見舞いされたことがある。

 

確かにそういうものなのかもしれない。

映画館のメインエンジンは言うまでもなくカップル客だ。

配信、DVD、あらゆる方法でコンテンツが見られるようになった時代、映画館で映画を見なければならない理由の一つとして、恋人同士があの暗闇の中、隣同士で2時間を過ごす理由を作ってくれる場所として他には代替できない強みを持っている。

でも知っての通り、映画館は今空前の危機に瀕している。

全世界を覆い尽くした新型コロナウイルス、COVID–19によってミニシアターを含むほぼ日本中の映画館が閉館に追い込まれた。

単に一時的な閉館だけではない。

政府による緊急事態宣言の直前に映画館に足を運んだ人なら知っていると思うが、閉鎖前、多くの映画館で観客同士の「社会的距離」を保つため、すべての座席をひとつおきに販売し、観客は隣の客との間に空席をひとつ挟んで座ることになっていたのだ。

これは映画館にとって深刻な事態だ。単純に半分しか座席を販売することができない、という経済的問題ももちろんある。

だが同時に、恋人同士がデートのムードを盛り上げるために映画を見にきても、2人の間には空席がひとつ挟まれてしまうことになる。

これでは上映中に手を握ることも出来やしない。

もちろん映画館だって都知事だって鬼じゃないから、入場してしまえば連れ立ってきたカップルが席を詰めて座ったって文句を言いはしないだろう。

でも初めてのデート、まだ恋人とは言えない2人が「面白そうな映画があるから」という口実でどうにかこうにか映画館デートに漕ぎ着けた時、「席をひとつ詰めて並んで座るかどうか」というのは結構微妙な問題になると思う。

何しろ席をつめるのにはそれなりの理由というものがなくてはいけない。

それもどちらから?相手がこちらに詰めてきてくれるのを待つか、それとも自分から詰めて反応を見る?

まったく厄介な問題がひとつ増えたものだ。

お前はどうせ普段から1人で観てるんだから全然困らないだろ、と言われると返答に窮するけど、まあ僕にだって困ったフリをする権利くらいはある。

本当に困ったものだ。

でも残念なことに、映画館、劇場、もしかしたらライブに至るまで、僕たちの社会はしばらくはこの「ひとつおきの空間」に慣れなくてはいけなくなるのかもしれない。

緊急事態の解除の後も、というかむしろ解除後の営業再開条件として、「ひとつ空け」は推奨される可能性があるからだ。

だから、というわけじゃないけど、ここでは「密着型」の熱い恋愛映画とは少し違う、人と人の間に少し距離のある恋愛映画を紹介してみたいと思う。

<恋は雨上がりのように>

 

Ⓒ2018映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 ©2014 眉月じゅん/小学館

 

2018年に公開された『恋は雨上がりのように』は、眉月じゅんによるビッグコミックスピリッツ連載の人気コミックを大泉洋と小松菜奈によって映画化した作品だ。

だがこれは、制作発表のニュースが流れた時、中年男性と未成年の恋愛を美化しているとしてネットで結構なバッシングがあった。

でも原作を見ても映画を見ても分かるように、それは誤解だ。

大泉洋が演じるファミレス店長近藤正己は、足の怪我によって陸上競技を断念した女子高生、橘あきらに思いを寄せられながら、最後まで彼女を遠ざけ続ける。

挫折した元小説家志望の文学青年としての過去を持つ近藤には、アキレス腱を断裂して陸上競技への思いを引きずるあきらの心情への想像力があるからだ。

神聖かまってちゃんの名曲をカバーした鈴木瑛美子×亀田誠治「フロントメモリー」のポップなメロディを背景に小松菜奈が疾走を見せるオープニング、エンディングで傷ついたあきらが再び走り出す原作の絵を生かしたアニメーションなど、永井聡監督による演出手腕も見事だったが、この映画の白眉はなんといっても坂口理子の脚本だ。

原作の優れたメッセージ、テイストを生かしながら、2時間の映画という限られた時間に見事に物語を再構成している。

北川悦吏子、野木亜紀子といった超有名脚本家に比べれば、坂口理子の名前は一般にまだ十分に知られているとは言えない。

だがこの脚本家の作品は今後も注目に値すると思う。

高畑勲の遺作となったアニメーション映画『かぐや姫の物語』が行き詰まり制作に窮した時に共同脚本として坂口理子が投入され、制作が再び動き出した逸話は有名だが、媒体的な制約の中で物語をひとつ上の次元に仕上げる魔法のような手腕を持っている。

『恋は雨上がりのように』の中では、清野菜名の演じた喜屋武はるかの描写にその脚本の素晴らしさが出ている。

原作でもそうだが、橘あきらの陸上部の喜屋武はるかは同性の親友である橘あきらに恋愛感情を持ちつつ、それを隠している。

あきらが思いを寄せる近藤に激しい敵意を見せていたはるかは、映画のラストシーンであきらを陸上部に送り戻した近藤に深く一礼する。

それは近藤があきらを傷つけず、もう一度走り出せるように送り返したことに対する彼女の感情だ。

あきらは喜屋武はるかの感情にまったく気がついておらず、おそらくはるかがそれを打ち明けることもないのかもしれない。

だが物語はそうしたいくつもの「片思い」を縦横の糸のように人生の形を編み上げていく。

社会から疎外された少女と中年男性が逃避行に及び美しく悲劇的な結末を迎える、というのはひとつの定型として存在するのだが(ジャン・レノとナタリー・ポートマンの『レオン』がその典型だと思う)、大学時代の友人で今は有名作家の九条との友情、陸上競技の年下のライバルとしてあきらを挑発する倉田みずきなど複数の人間関係を配置し、物語を破滅に向かう線路からそらしていく。

原作でもそうなのだが、映画の短い尺でこれをスマートに見せていく脚本力は圧巻だ。

映画公開と同時に連載を完結した原作の最終回では「私は雨宿りをしていたんだ」という印象的なヒロインのセリフがある。

『恋は雨上がりのように』というタイトルと並べた時、この作品で描かれていたものが恋愛でなかったことに読者は気がつく。

それは雨が上がるまでの時間に起きた恋愛ではない、しかしとても重要なことについての物語なのだ。

映画が作られた時点では原作は完結していないので、映画の中にこのセリフはない。

しかし坂口理子の脚本は、原作のテーマに見事に答えたものになっていた。

<愛がなんだ>

(c)2019映画「愛がなんだ」製作委員会

2019年、今泉力哉監督を一躍世に知らしめた映画『愛がなんだ』は映画界に一大センセーションを巻き起こした。

72館から152館まで公開が拡大したこの映画の特徴は、映画評論家やマスメディアの宣伝はむろんのこと、SNSでのインフルエンサーによるシェアすらメインエンジンではなく、ほとんど同世代の若者たちによる口コミ、人から人への顔が見えるコミュニケーションの連鎖で映画が拡大していった。

ポスターのイメージとは裏腹に、この映画の中には両思いの幸福な恋人がほとんど登場しない。

誰もが誰かに片思いをし、時には不当に扱われながら、彷徨うように青春を送る群像劇は、驚くほどの同世代の支持を受けてロングランした。

川崎の映画館で見た、女子高生たちが友達を誘ってリピートし、泣き出した友達の肩を抱き抱えるようにして帰っていく光景は今も忘れられない。

そうした「観客たちの風景」というものもまた映画の一部であり、文化であるように僕には思えるのだ。

<ヲタクに恋は難しい>

(C)2020映画「ヲタクに恋は難しい」製作委員会
(C)ふじた/一迅社

今年公開された映画『ヲタクに恋は難しい』はそのタイトルとは逆に、恋人として交際する男女のオタクの悲喜劇を描いた映画だ。

だが福田雄一監督得意のギャグによるおちゃらかしの向こうには、男女のコミュニケーションの困難というテーマが描かれている。

高畑充希が演じる女性のオンとオフ、会社でOLとして働く時の仮面と趣味の仲間の前で感情を発露する素顔の切り替えの演技は見事だし、幼なじみに対して素直な感情を出せないゲームマニアの青年を演じる山﨑賢人の人物造形はとても繊細だ。

原作は軽妙でポップなコミックなのだが、生身の人間が演じる映画版は「恋=コミュニケーションの難しさ」にフォーカスした作品になっていたと思う。

この映画はミュージカル形式をとり、ロケや撮影も王道の恋愛ドラマの手法をあえて踏襲している。

それは王道恋愛ドラマのパロディという側面も無論あるのだが、別の面で見れば古典と定型へのオマージュ、今も昔も、オタクもリア充も同じように人と人の距離に悩むのだ、というリフレインの物語として作られているように見える。

 

ここであげた三つの映画に共通するのは、それが人と人との距離について描かれた映画だということである。

今回の感染症に対するロックダウンが行われた海外から「いつかまた一緒にいるために、今は離れよう」というツイートが流れてきた時、僕にはそれがある種の映画を表現するキャッチコピーのようにも思えた。

ただひたすらに「ひとつになる」ことだけではなく、社会的距離とは別の精神的距離を取ることで自分自身を見つめ直し、再び誰かと手をつなげるようになることもあるのだ。

『恋は雨上がりのように』の主人公、橘あきらが長い雨宿りの後に再び走り始めるように、もしそうなれるのなら僕らの世界を覆うロックダウンと緊急事態の土砂降りの雨を見上げる「雨宿り」の時間にも意味があるのではないだろうか。

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